相続トラブルイメージ

相続する物なんてないと思っていたら

私の母は非常に質素な暮らしをしており、端から見ればこれといった財産もないような暮らしぶりをしていました。
そんな母が遺言書を残していたことが分かり、亡くなった当時は兄妹同士でびっくりして顔を見合わせるほどでした。
どんな物を相続するのかと財産を調べると、母がずっと大事にしてきた古びたぬいぐるみが一つあるだけでした。
遺言書には兄妹にぬいぐるみを残す、受け取りは兄妹3人で決めるようにとかかれているだけでした。
なぜわざわざ古びたぬいぐるみのために遺言書を残したのかと、正直当初は兄妹全員あきれていました。
ちょうど一番下の妹に姪がいましたので、そのぬいぐるみはその姪に渡すことになりました。
そのぬいぐるみのことはすっかり忘れてしまっていたのですが、昨年の秋、突然妹から連絡が。
子どもがあのぬいぐるみで遊んでいたら、頭の縫い目が破れて透明な石が出てきたとのこと。
見せてもらうと非常に綺麗な石でしたが、私には見る目などなく水晶かクリスタルのように見えました。
母が大事にしていただろう物がぬいぐるみに隠してあったことに皆で驚き、また母の姿を思い返してほほえみ、また涙がこぼれました。
ある日とても綺麗な石だからと一応宝石店で見てもらうことにしました。
先述のようにわたしは大したものではないと思っていたのですが、実はその石は大きなトパーズだと言うのです。
兄妹皆でびっくり仰天しました。
貯金もないような貧乏な生活をしていた我が家になぜこんな宝物があったのか、しかも母はなぜぬいぐるみの中にそれを隠したのか、私たちにもまったく思い当たる節がありませんでした。
先日母方の叔母にあった際、その真相が明らかになりました。
その宝石は母が父と婚約をした際に父から贈られた物であること、そしてどんなに家庭が経済的に大変な状況になっても母はそれを決して手放そうとはしなかったことを話してくれました。
父もすでに他界してしまっているため、そのことは私たち子どもには知らされていないままでした。
私たちから見た両親はまさに昭和の夫婦のような、口数も少なく、なぜ父と母が結婚したのかなども一切話そうとしない二人でしたので、本当に好き合って結婚したのかさえ分からないほどでした。
母が亡くなってからしばらく経ちますが、言葉では言い表せない人間の愛情の深さをこの年齢になって初めて体験した出来事でした。
多くを語らずも絆を感じられる深い信頼を分かち合える夫婦を目指して、これからも生活をしていきたいと思います。

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